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ここにあること

Release 形式

ストリーミング

楽曲形式

EP

Release

2023/7/21

視聴リンク

Moiroiの1st EP『ここにあること』は、彼女の音楽的なスタート地点を示すと同時に、彼女の内面世界を静かに、そして繊細に掘り下げた作品だ。2023年7月にリリースされたこのEPは、ウクレレを中心としたアコースティックな響きと、デジタル音楽の要素が共存しており、Moiroiの持つ多面的な音楽性が一貫して表現されている。プロデューサーに24NEETを迎えたことで、彼女自身の音楽の方向性やビジョンを具体的に形にする過程が垣間見える。彼女は作詞・作曲だけでなく、プロデュースにも積極的に関わり、音楽に対する自身の考えや感情を、具体的に音として表現することを試みている。

このEPには、4曲が収録されており、それぞれの楽曲が異なる角度から彼女の内面世界や心の風景を描き出している。

1曲目の「Re:I」は、遠くにいる存在を想う気持ちが核となっており、光と影、孤独と他者との関わりがテーマとなっている。楽曲の冒頭で歌われる「光る遠い場所 あなたはいるのだろうか」という問いかけは、孤独の中で他者の存在を感じることで、そこに希望や意味を見出そうとする姿勢が込められている。このようなテーマは、Moiroiの音楽全体に共通する要素であり、彼女のリリックには常に、自己の内面と外の世界との関係性が描かれている。この楽曲のメロディは、柔らかく広がりを持ちながらも、どこか切なさを感じさせ、彼女の感情表現が丁寧に織り込まれている。

次に、2曲目の「Turquoise」は、自然の風景と自分自身の感情を重ね合わせる手法が取られている。この楽曲では、海や草木の青、そして広がる空が彼女の孤独感や内面的な感情を映し出している。特に、「目は心の窓 空は心の鏡」と歌われる部分は、心の中に広がる思いが外の世界と連動していることを示唆しており、Moiroiが持つ感受性の鋭さが表現されている。リリックには日常的な要素が織り交ぜられており、例えば、「ちょっとコンビニ寄ろうか」や「お気に入りのスニーカーでも履いて」といったフレーズは、日常生活の中で感じる小さな瞬間に目を向け、それを音楽の中で重要なテーマとして扱っている。このように、彼女の楽曲はシンプルな情景描写でありながらも、そこに内在する感情の深さが垣間見える。

3曲目の「傍に。」は、Moiroiが2021年にウクレレを使って初めて作詞・作曲した楽曲であり、彼女にとって特別な意味を持つ。この楽曲では、目に見えないけれども確かに存在している誰かの傍にいたいという感情が、シンプルな弾き語りのスタイルで静かに表現されている。「泣かないで ここにいるよ」という優しいフレーズは、聴く者の心に直接語りかけるような親しみやすさを持ちながらも、その裏には寂しさや不安が感じられる。このように、Moiroiの楽曲には表面的な優しさの中に潜む深い感情があり、リスナーに対して内省的な視点を促すような仕組みが組み込まれている。

最後の楽曲「木々花々」は、24NEETとの共同作曲によるもので、このEPのクライマックスを飾る楽曲だ。自然と共に流れる時間の中で、Moiroiが感じている「ここにある」という実感や、儚さの中に潜む美しさがリリックに反映されている。「あなた色の花が咲く」という繰り返しのフレーズは、変化と成長を象徴しており、彼女の音楽的テーマである「内面的な成長」や「時間の流れ」の重要性を強調している。この楽曲では、抽象的なリリックが多用されており、明確なストーリーよりも、感情の断片やイメージが浮かび上がる構成となっている。そのため、聴く者は自分自身の体験や感情を重ね合わせながら、楽曲を通じて感じるものを探し出すことができる。

『ここにあること』というEP全体を通じて、Moiroiは日常生活の中で感じる感情や孤独、そして他者との関係性を、非常に丁寧に描き出している。音楽的には、ウクレレの弾き語りからデジタルサウンドまで、多彩なアプローチを見せながらも、一貫してシンプルで静かな感情表現が貫かれている。また、彼女のリリックには明確なメッセージというよりも、感じ取られるべき感情や雰囲気が込められており、聴く者に解釈の余地を残している点も特徴的だ。

このEPは、彼女自身の音楽的なルーツを探りながら、未来への可能性を感じさせる作品であり、シンプルな楽曲構成の中に深い感情が込められている。聴き手は、その音楽を通じて自分自身の内面を振り返り、Moiroiの世界に共感しながらも、彼女の音楽が提供する静かな癒しや希望を感じ取ることができるだろう。

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