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human being

Release 形式

ストリーミング

Release

2024/3/24

リンク

楽曲形式

EP

Arinagaの1st EP『human being』は、彼の音楽キャリアにおいて大きな転換点を示す作品だ。これまでSoundCloudを主な活動拠点としていた彼にとって、今回のEPは初めてのストリーミングリリースであり、自身の音楽をより広いリスナー層に届けるための重要な一歩となる。本作は、全6曲の構成で、彼のこれまでの音楽的探求を集約し、リスナーに対して強いメッセージを放つ内容となっている。EPタイトル『human being』は、彼が自身に刻んだタトゥーから取られており、シンプルな言葉でありながらも、そこには深い意味が込められている。このタトゥーは、彼自身の存在の本質を表現しており、同時にこの作品全体のテーマでもある「人間としての存在」を探るものだ。

1曲目の『Balloon』は、Arinagaが繰り返す「おうちにかえりたい」という言葉が印象的だ。このフレーズは、物理的な帰属地ではなく、心の安らぎを求める内なる叫びのように聞こえる。「だれかにとってはいいところ だれかにとってはわるいところ」と歌うことで、人それぞれの視点や価値観が異なることを暗示しつつ、彼自身がどこに自分の居場所を見つけられるのかを模索している様子が浮かび上がる。また、「小さい頃怖いもの 今怖くない」という歌詞には、成長とともに変化する恐怖の対象が描かれており、無垢な子供時代と複雑な大人の世界との対比が感じられる。風船が空に飛んでいく様子は、彼が感じる不安定さや、制御不能な感覚を象徴しており、この曲全体を通じてArinagaの内面の不安や孤独感が巧みに描写されている。

3曲目『Dschinghis Khan』では、彼の不安定な感情がさらに強調される。「曇りってなってるのに天気」という歌詞は、予想外の状況に直面した際の混乱や戸惑いを表現しており、彼が感じる現実とのギャップがここでも色濃く描かれている。「いつも怖くないのになんだか今日は怖いな」というフレーズが繰り返されることで、日常の中で突然襲いかかる漠然とした恐怖感が強調され、彼の内面が揺れ動いている様子が伝わる。さらに、「いつかたくさんの人間と踊り囲んでる焚き火」という歌詞では、彼が孤独を感じながらも、他者とのつながりを強く求めている様子がうかがえる。焚き火を囲む人々の姿は、彼の夢想や理想の一端を表しつつ、その現実が未だ遠いものであることを示唆している。

EPの中でも特に注目すべき曲が4曲目の『waaaa』だ。この曲は、彼の内なる強さを自己肯定的に表現しつつ、同時に社会や自己の限界に対する葛藤が強く表れている。「俺は強い お前も強い 生きてるだけでマジですごい」と繰り返されるフレーズは、一見すると自己肯定や励ましの言葉のように聞こえるが、その裏には「自由に描いていいのに結局縛られてる」といった現実の制約に対するフラストレーションが滲み出ている。Arinagaは、砂漠の中でオアシスを探し求めるように、自分自身の道を歩み続けるが、その道のりは決して容易なものではない。彼の内なる戦いが、目に見えない敵と対峙するような形で描かれており、「目が見えない」というフレーズが、現実の先が見えない不安感を象徴している。

このEP全体を通じて、Arinagaは「人間であること」にまつわる多様な側面を探求している。曇り空や風船、焚き火、砂漠など、彼が用いる比喩は、どれも内面的な不安や混乱、そしてそれを乗り越えようとする意志を反映している。彼のリリックは、曖昧でありながらも、深く根差した感情を表現しており、その詩的な表現が聴き手を引き込む力を持っている。特に、『Balloon』や『Dschinghis Khan』、『waaaa』といった曲では、彼が感じる日常の中の孤独や不安、そしてそれを克服しようとする努力がリアルに描かれており、彼の内面的な葛藤が強く表出されている。

EP『human being』は、Arinaga自身の人間としての存在を探る過程を、音楽を通して表現した作品だ。それは彼の内面的な旅路であり、その中で彼は自らの不安や葛藤と向き合いながら、それを乗り越えようとする意志を持ち続けている。音楽的には、クラウドラップやハイパーポップ、アブストラクトなど、彼がこれまで培ってきた多様なスタイルを取り入れながらも、全体を通して統一感のある作品に仕上がっている。このEPは、Arinagaの音楽的な成長とともに、彼の内面の深さをより一層感じさせるものとなっており、リスナーに強い印象を残すだろう。

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